「20世紀型教育」は学んできた力を重視すればそれで社会に通用するかのようでした。しかし21世紀社会では、「学ぶ力」「学ぼうとする力」「共に生きる力」が重視されるようになってきました。グローバル社会のなか、異文化・多民族・多言語に接する機会が増えました。さまざまな価値観を持つ人々とともに歩む中で、自己表現・創造力・分析力・問題解決力・コミュニケーション力などがより必要となっています。
本校では、社会が求めるこのような力を育む教育を実践しており、生徒の全人格的な成長と完成を目標としています。それが「21世紀型教育」です。
これからの社会を生きぬいていくために「自分を知る・深める」「社会を知る・考える」「思考・判断・表現のスキル育成をする」ことが生徒たちは必要です。さまざまな場面で生徒たちがそれらを学ぶ場所・環境として、2016年夏にFuture Centerを本館5階に設置しました。
21世紀型教育の手法としては、各授業に取り込まれているアクティブラーニングや、授業や行事で行うProject Based Learning(PBL)、プレゼンテーション、ポスターセッション、ディベートなどが挙げられます。共通しているのは、生徒一人ひとりが深く考え、仲間と協働して問題を発見し解決していくことです。Future Centerでは一人で行う活動、グループワーク、シェアや発表などが、短時間で自在に変化できます。
PBLとは、プロジェクト運営を通して生徒が自分たちの力で探究し体験する能動的・協働的な学習の方法です。本校のPBLは、文化祭における「記念祭実行委員」と中2夏期学校「北アルプス蝶ヶ岳登山」の2つの行事から始めて少しずつ取り組みの範囲を広げてきました。
PBLはプロジェクトの規模の大きさを問うものではありません。どれだけ大きなことを成し遂げたかではなく、PBLを通してどれだけ質の高い経験を生徒ができたかが重要です。また、いくつかのPBLでは、学習前後に「ルーブリック」による自己評価を行っています。そこには学習プログラムの目標と達成度が明記されており、何がどれだけできるようになったのか、自分の成長を認知することができます。自己を振り返ることで、生徒は自立(自律)した人間に成長し、自分のうちに秘められた賜物(能力)に気づきます。「自己変革」が起こり、さらに自らを成長させようとするのです。
全生徒がBPL/PMを体験
有志・実行委員がBPL/PMを体験
2012 |
導入初年度に複数のPBLを動かした
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2013 |
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2014 |
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2015 |
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タイ研修旅行で無医村を訪れたことがきっかけで医学部を強く志望する生徒や、現地学習を経てユネスコの職員を目指すために国際関係の学部を志望する生徒が現れてきました。教員が意図していた学習効果とは違う角度で、将来の方向性や目標を見つける生徒が多数います。生徒自身が将来を見据えて、目指すべき大学を考えるようになることで、受験勉強のモチベーションも保つことができています。
高Ⅱ沖縄平和学習、中3糸魚川農村体験学習、中2北アルプス蝶ヶ岳登山などの多くの体験学習を実施した後に、振り返りとしてポスターセッションやプレゼンテーションを行う場を設けています。感想文として終わるのではなく発表する形をとることで、生徒の「書く・まとめる」スキルを高めさせます。また「発表する」ために適切な資料の選択や図・写真の示し方も工夫を凝らすようになり、語彙力・表現力が身についていきます。
(株)マイナビが主催する「キャリア甲子園2015」において、学校設定科目「現代の社会」の受講チームが資生堂代表として決勝ステージに進出しました。1,800人、460チームが参加する中で、書類選考を通過し、ブロック予選を勝ち抜き、5チームしか進めない決勝ステージの舞台へ。『2020年の若者に「清潔」「爽やか」を提供する商品を考えよう』というテーマに対して、徹底的にブランディングにこだわったアイデアを提案しました。
高Ⅱ沖縄平和学習、中3糸魚川農村体験学習、中2北アルプス蝶ヶ岳登山などの多くの体験学習を実施した後に、振り返りとしてポスターセッションやプレゼンテーションを行う場を設けています。感想文として終わるのではなく発表する形をとることで、生徒の「書く・まとめる」スキルを高めさせます。また「発表する」ために適切な資料の選択や図・写真の示し方も工夫を凝らすようになり、語彙力・表現力が身についていきます。
高Ⅰフレッシュマンキャンプ(2泊3日)では、自然の中での活動を通してチームビルディングを行った後、社会探究的な活動を実施。「国際・産業・環境」の3つのテーマに分かれ、地域の魅力と課題を探ります。
現場の方々からお話を伺い、議論を重ねその解決策を発表します。生徒たちが取り組んだ課題は地方だけの問題ではなく、現代に生きる人すべてに関わる難問として考え、これからの社会について思考と創造を重ねていきます。
高校Ⅲ年生の総合学習で、街の活性化企画を北区に提案する「北区地域プロデューサー講座」を開講。生徒主導で実地調査、分析、討論、発表まで行います。文化・福祉・交通・商店街などあらゆる面から北区を考え、提案を練っていきます。発表には区役所職員や区議会議員、JR職員や北区観光ガイドの方々などもお招きし、その様子はメディアにも取り上げられました。
PBLをより効果的に実践するために、PM(Project Management)を活用しています。PMは決まった期間内で与えられた課題を効率的にやり遂げるための方法です。プロジェクトの目的、目標設定、構成要素の洗い出し、作業手順の構築、工程表作成、リスクマネジメントなど一定の流れを体験する中で、会議の方法や議事録の取り方についても身につけることができました。また、これらを管理するグループリーダーが多く出現します。プレゼンテーションするなど人前に立つことが苦手でも、グループの働きを支えることができるなど、生徒の特性を生かした活躍の場を増やすことができます。一人ひとりが与えられた役割を果たし、協働することによって課題解決ができることを学ぶのです。これらは自己肯定感を生み出すことにつながります。聖学院のOnly One for Others(他者のために生きる個人)の精神が、この中にも実践されています。
生徒は授業や体験学習などのプロジェクトで培われた力・経験を、他のプロジェクトや授業でも生かしていきます。そして相乗効果が生まれ、より学内が活性化していきます。
私たちの生活は科学的進歩によって支えられています。高度化する科学技術において世界に貢献できる人材を送り出していくことを目標に、聖学院では理数教育を強化・充実していきます。数学と理科のカリキュラムを再編成し、工夫ある授業を実践して理数離れを防ぎ、科学を追究する積極的姿勢を育てます。
中高一貫教育用に作られたテキスト「体系数学」(数研出版)を用い、6年間を有効に使った教育を展開しています。2年ごとに「入門期」「発展期」「完成期」の3段階に分け、基礎をしっかり固めること、家庭学習を習慣づけることからスタートし、やがて高難度の大学入試問題に取り組む力を引き出していきます。また理系進学希望者に向けて、副教材のほかに教員がオリジナルプリントを作成し、ハイレベルな数学力を育成していきます。
■ 補習を充実し、きめ細かな指導
数学が苦手な生徒から理系難関大学をめざす生徒まで、目的に応じた補習・受験補習を用意しています。全学年を対象とした「夏休み補習」、中学3年次の「勉強合宿」などがあり、また新たに「土曜補習」も組み入れています。
学生講師が学びのサイクルをマネジメント
前回の振り返りと、
それに応じた目標設定
自ら考えて解く
個人・グループでの
振り返り
東大生フェロー
中学1年次~中学3年次春まで、東大生を中心とした学生が「自学自習の習慣付け」「数学力の向上」を目標に指導にあたっています。
聖学院ではもともと旧校舎時代に理科館があり、1950 ~ 60年代は都内私立校の理科教育の拠点校でもありました。
「実験を数多く取り入れてきた学校」としての歴史の流れを大切にし、新校舎にも6つの理科室が完備されています。
充実した施設を利用して、中学の「基礎充実期」では「知的好奇心」の芽を育てることを重視しています。実験・観察授業を通して「なぜ?」という気持ちを生徒に起こさせ、そこから仮説を導き、科学的思考を育てるカリキュラムを組んでいます。
6年間での最終的な目標は、科学的リテラシーの習得と自ら学び続ける「自発的な学び」の姿勢の習得を植え付けることだと考えています。